亜姫は和友とリストを整理しながら文化祭のプログラムを組んでいた。

「うちは友花梨のケーキでカフェするんだけど和くんのクラスは何するの?」
「なんかホストクラブらしいです」

もちろん僕は参加しませんけど。

「僕は裏方に徹します」
「注目されたくないんだね。綺麗な顔なのに」

人の記憶に鮮明に残らないため?

「本当は目なんて悪くないんでしょ」

近眼なら、レンズに映る輪郭が内に入る。

「前髪も」

顔が半分隠れてるもん。

「僕は兄さんのように人望もなければ媚びを売る気もないんでね」

否定するわけではありませんが。

「兄として尊敬しています。上に立つ者は知性よりも人望が大事だと思いますしね」

ですが。

「僕は兄さんほど器用ではないので」
「そっか」

コンプレックスってやつ?

「その気持ち、ちょっとわかるよ」

あたし、人見知りするから、親しみやすいとは言えないし。
人に良く見られようと努力するわけでもないし。

ありのままの自分を受け入れてくれる人がいればいい、みたいな。

「だから、自然と人が集まっちゃう菊地先輩が羨ましい」

そして、酷く惹かれる。

「兄さんが好きなんですね」
「フラれちゃってるんだけどね〜」

一途でいいんじゃないですか。

「ありがとね」
「いえ」

和くんは婚約者いないの?

「いますよ」
「お金持ちってみんな婚約者がいるもんなんだね〜」

政略結婚ってやつ?

「そうですね」

ふと。

頭に何かがひっかかる。

「亜姫さん?」
「…っなんでもない!早く終わらせちゃお!」

あいつは。

市矢はどうなんだろう。
決められた婚約者がいるのかな。

「お疲れ様、亜姫ちゃん」
「友花梨」

これ渡そうと思って待ってたの。

「はい、これ。部活で焼いたカップケーキ」
「ありがとー」

和友くんもよかったらどうぞ。

「ありがとうございます」
「甘いけど平気かな?」
「甘いのは大好きです」

はにかんだ笑顔。

かっ、かわいい…!!

亜姫と友花梨は息を呑んだ。
さすが菊地先輩の弟。
不器用だけど、笑うとかわいいんだ。

血は争えない。