市矢が反応したであろうものを和友も見た。

「世間てうまいように出来てますね」

人気カフェの窓際の席に亜姫は座っていた。
その店の一番奥の席に。

「なんで居るんだよ…」

女ってみんな考えることが一緒なんじゃないですか?

「甘いものが好きなもんなんですよ。きっと」
「あっちはともかく亜姫はんなガラじゃねーだろ」

市矢さん。

「親友の友花梨さんは家庭部で趣味はケーキ作りだそうです」
「そっちか…」

「このケーキおいしい〜」
「まだ新しいからお店も綺麗だし、雰囲気いいね」

一回来てみたかったんだけど、最近亜姫ちゃん生徒会で忙しそうかなって。

「全然。たまには女同士で話したいし、誘って」
「うん。わかった〜」

ところで。

「あの奥の席の人達、春日の制服着てるね」
「春日って、あのお嬢様校の?」
「そ。この辺で一番人気の制服なんだよ。かわいいね〜」

シャツがピンクだ〜。

「でもあの二人組対照的だね」

一人は膝丈スカートにきちんとシャツのボタンを締めて。
一人は着崩して脚も胸元も露出したスタイル。

「超お嬢様校にあんなに乱れたカッコもいるもんなんだね」

「ねぇ、あの窓際の席の二人組」

あんたんとこの。

「あーほんと。春くんとこの生徒だね」
「そんで、窓の外も」

二人組。

「…市くんと和くん?」

こっち見てるね。
何してるんだろう?

「あんたに用なんじゃないの?」
「あ、でも帰ってくよ?」

なんなんだろうね?

「おい」

窓からの侵入者を亜姫は睨んだ。

「何よ」
「お前さっきカフェに居ただろ」

居たけど?

「あのカフェにはもう行くな」
「なんでよ」

最近お気に入りらしくて、学校帰りにほとんど毎日通ってるって。
嬉しそうに話してたよ。

危険度80パーセント。

「もう行くな」
「無理よ」

だって、カフェを出るときに。

「君たち、かわいいね。よかったらうちでバイトしない?」

夏休みだけでいいから。
だめかな?

「バイトしたかったし、ホールの制服かわいかったからその場で返事しちゃった」
「お前…馬鹿か…」

市矢はぐったりした。