ねぇねぇ。
どうしてお兄様の髪は春也と違うの?

子供の頃の自分を恨む。

風に揺れる細い髪が。
血の違いを象徴しているようだった。

私はなにも知らずにお兄ちゃんを傷つけてた。

生半可な気持ちで兄妹の絆にこだわってるわけじゃない。
血を分けてなくても本当の兄妹なんだって。

お兄ちゃんのことが大好きだって。
ただ、わかってほしいだけなのに。

「どうしてお兄ちゃんじゃダメなの?」

九城の家を継ぐのにあれほど相応しい後継者はいないのに。

「春也、お前が九城家を継ぐんだ」

パパもそう言うのね。
お兄ちゃんのほうが頭もよくて、なんでもできるのに。

「二人とも、お兄ちゃんが気に入らないからって春也に押し付けようとしてる」

気に入らない。
気に入らない。

「みんな嫌いよ!もう一人にして!!」

お兄ちゃん。
どうして出て行っちゃったの?

「そう言えば…」

お兄ちゃんの髪、金髪だった。
どうしてかな。

市矢は金の髪に触った。

「黒染めしたら?」

生徒会役員がそんなんじゃダメでしょ。
亜姫は市矢に言う。

「不良キャラだからいいの」

金持ちの坊ちゃんがグレるとたち悪いわね。
グレかたが古いけど。

「そのピアスは?」
「もらいもん」

ふーん。

「…元カノからの?」
「気になる?」

市矢はにたりと笑った。

「べ、別にっ」
「ムキになるとこがあやしーの」

アキちゃんかわいー(笑

「馬鹿にしないでよ!」

あたしはヒーリングスマイルの春樹先輩命なんだから!

「そんなアキちゃんに訃報だけど」

急に何よ。

「文化祭で愛しの春樹先輩の彼女見れるかもよ」

先輩の彼女。

「来るの?」
「来るでしょ」

…見たくない。

「一緒にいるとこ見たらあきらめつくかもね」
「あんた、応援してくれるって言った割には不親切ね」

だって。

「お前、今ブサイクだから」

俺、そんなお前見たくねーもん。

「とりあえず、これだけは言っとく」

お前と正反対。

「なにそれ嫌味?」
「別に」

春樹くんご丁寧に紹介なんかしてくれるかもね。

「会えばわかるよ」