テスト最終日。
全クラスに生徒会からのプリントが配られた。

『文化祭のお知らせ。

各クラスは文化祭実行委員を1名選出し、催し物の詳細を決定すること。
不適切と判断されたものについては練り直して速やかに再提出すること。
部活動については参加自由とするが、クラスの催しを優先とし、これを怠ってはならない。

本年は例年にない投票を用い、上位3組とその貢献者1名に賞品を与えるとする。

質疑は各生徒会実行委員まで。』

「なーんか漠然としすぎてなにしていいのかよくわかんね」

市矢は生徒会室に着くなり、だるそうに頬に掌を食い込ませた。

「要するになんでもありってことですよ」

兄さんは自由な人ですから。

「たとえば全クラスかき氷がやりたいっつったらどうするつもりなんですかね」

お前の兄貴は。

「決まってるさ」

和友は薄く笑った。

「やらせればいい」
「やらせればいい」

重なる声。
春樹が入って来た。

「さすが和友。俺をわかってる」

春樹は嬉しそうに笑った。

「同じ物をするとすれば、より大衆に受け入れられるクラスが勝つ」

そのアイディアは王道であるかもしれないし、真新しいものであるかもしれない。

「他クラスに負けないために悩んでもらわないと賞品を出す意味がない」

それが付加価値の為であっても、競争意識を駆り立てることができる。

「人は人、自分は自分なんて社会では通用しないからね」

そこに自分以外の人間がいて初めて社会が成立するってことを勉強してもらわないと。

「俺はやるからには徹底的にやるよ」

春樹。

「お前間違いなく親父さんの子だ」
「じゃあ市矢はどっちか言うと母親似かな」

笑いながらそう言った春樹を、和友は思いきり睨んだ。

「あー、あー」

そりゃ、ない。

「だって春也が母親似だもんよ」

同時刻、九城邸。

「春也、昨日も家庭教師に会わなかったそうだね」
「お兄ちゃんじゃなきゃ嫌って言ってるでしょ」

わからない子だね。

「あれを九城家の者とは認めません」
「誰がなんて言おうと春也のお兄ちゃんはお兄ちゃんなんだから!」

お祖母様の分からず屋!
春也は舌を出した。