「そういえば、わざわざ呼び出したってことは何か用事?」



息苦しい空気を変えようと、不自然に明るい声で、アタシは強引に話題を逸らす。



「ん?あ〜、そうだった。本題を忘れてた。日奈子ちゃん今日、学校来てた?連絡取りたいんだけど。」



「ヒナ??あぁ、映画の話?何だヒナに用事ならさっきのTELの時言ってくれれば一緒にいたのに…。てゆーか5限で会うでしょ?」



「あぁ、それは確かに。映画の約束しようと思ったら連絡先知らないじゃん!て。何か知ってるような気になってたんだけどなぁ。」



アタシは話しながら携帯をバッグから取り出して、日奈子に電話をかける。



コールボタンを押して、呼び出し音が鳴るのを確認して、ケータイを裕紀に手渡す。



短くサンキュって言って、電波が拾える外に出ていく裕紀の背中を、アタシは深い深い溜め息で眺める。