気付けばずっと右手に握りしめたままのケータイに都のNO.を呼び出して、発信ボタンを押す。



都、まだ起きてるといいな…。



アタシは祈るような気持ちで、明かりの灯る都の部屋、201号室の窓を見上げる。



いま来た道をまた一人で戻るのは、嫌だ。



こんな夜は、自分の部屋に帰っても、きっと淋しくて眠れないから。



…トゥルルル、トゥルルル、トゥルル……呼び出し音が鳴り、3コール目の途中でプツリと途切れる。



「もしもし?」



「ミヤ、まだ起きてる?」



「うん、起きてるよ。…サヤ、泣いてる?何か涙声だけど。今どこ?」


「ミヤん家の下。入口の前。今、会える?」



「ウチの下?!ちょっと待って、すぐ行くから。」



通話が切れるのと同時に、ガチャッ、バタンと玄関のドアを開閉する音が下まで響く。



続いて、足早にダッシュでダダダダッ…と階段を一気に駆け降りてくる足音。