「先生?」



心配そうな表情をして、紫海は、俺の顔を覗き込む。



「な?紫海…」



「っ…せ先生!?」



俺の真剣な声に紫海はビクッとなる。紫海を見下ろし瞳を見つめる。紫海の耳元に唇を近付かせると小声で俺は囁いた。


「恭平って呼べよ?な?」



「え!?」



「先生じゃねーから。今は…ヤクザに追われてるただの男だぜ?俺…」



「あっ…確かに…なら…」



そう言って紫海は、下を向いたままもじもじし出した。



「紫海?」



「っ…!!先生!!」



あまりにも悔しいから俺は、紫海の耳元にふーっと息を吹きかけた。真っ赤な表情をしながら睨む紫海も可愛くて俺は、もう好きなんだと自覚した。



普通死刑なんて言わないだろ?浮気如きで…だけど、そんな嘘を信じていた、紫海に俺は、惚れたんだって今なら思う。


だけど、それは俺だけの内緒だ。紫海本人には、俺が死ぬ前に言うつもりだ。



それまでは、俺だけの心の中にしまい込んでも良いだろ?紫海…