学食は、ほぼ全生徒がいるはずでも席はまばらだ。

全職員が利用して、やっと満席といったところか。

皆、特に決めたわけではないが、大体が毎日同じ席についている。

ミウ達もカウンターから好きなメニューを選び取り、いつもの窓際に腰を下ろした。

栄養とカロリーを考慮した内容のメニューではあるが、味は旧日本人が満足いく食事なので人気も高い。

「ニンジンきらぁい」
カオナがミルクスープの中を見て口を尖らせる。

「好き嫌いしてると大きくなれませんよ」
ミウが先生口調でふざけた。

「充分に大きいから、ご心配無用ですよぉだ」

「うぅぅ」

取り留めのない会話も普段と変わらないように見えた。

ユウマはそんな二人の会話を静かに眺めている。


少しして、カウンターでトレイを持ったヤマトの姿があった。
「ヤマト教授っ」
ミウらのひとつ隣りのテーブルで食事をしていた二人組の女子生徒が大きな声で手を振っている。

一同の視線がヤマトに集まり、ミウの心臓が大きく跳ね上がった。

振り向くと戸惑いながらテーブルに向かうヤマトが瞳に映る。
白のブイネックベストにワイシャツ、黒のスラックスでネクタイはしていない。
昨日よりもカジュアルな印象だ。

席に着くと、女子生徒らは自己紹介を始めた。


「ふぅん。意外に人気あんだねぇ」
カオナは頬杖をついて感心する。

「…」

ミウは横目でちらりと覗きこむ。

質問攻めにあっているヤマトは少し困った表情を浮かべていた。

そんなヤマトの横顔を見ると、ミウの鼓動の高鳴りは大きくなり、自然と耳は隣りのテーブルに向いている。

時折、女子生徒の笑い声が響いた。

ミウは、切なさと喜びを交互に感じていた。