ミウは、一時限目が終わっても、どこか上の空だった。

ユウマとカオナが話しかけても、笑顔で答える程度だ。
カオナと違い、普段から活発に発言するほうではないが、それと比べてもよそよそしさが伺える。

そんなミウの微妙な変化をカオナ的には気になってはいないようだが、ユウマは引っかかっていた。

二時限目に入っても、ミウの様子は同じだった。


やっと午前中の退屈な授業が終わると珍しくミウから口を開いた。

「さぁ。ご飯だぁ。お腹空いたなぁ」
早々と席を立つ。

「おや、奇遇だね。あたしもペコペコだぁ」
ふざけた口調でカオナも席を立った。

「まったく。色気より食い気だな」
ユウマも席を立った。

「食欲旺盛ってことは、健康な証拠だよ」
カオナが人差し指を立てて大きく振る。

「そうそう」
ユウマの前を歩くミウも、振り向いてカオナの真似をして人差し指を振った。

「やれやれ」
呆れたように答えている。
内心は授業中のミウが、元の明るさを取り戻したようで安心していた。

しかし、それとは反対に明る過ぎる思いもあった。
普段ならそんなこともなかったので余計に気になる。

いつでもミウだけを見つめてきたからこそ、言葉には出来ない“変化”を感じたのかもしれない。


「気にし過ぎだな」

カオナと話しながら歩くミウの後ろ姿を眺めながら呟いた。

誰に伝えるわけでなく、むしろ自分に言い聞かせるようだった。

三人は食堂へ向かう他の生徒らの波に紛れて廊下を進んだ。