ミウは、そんな会話やユウマの優しさはよく解っていた。

しかし、この関係自体がGAPに決められたものだということに一抹の不安を覚えていた。

お互いのDNAなどから、出生から婚姻までを司る良性遺伝子後継のための日本人絶滅保護計画。

果たして、人の感情までもコントロールできるものなのだろうか。

そんなことを考えてしまう自分が、ユウマを本当に愛しているのだろうか。

ユウマの優しさは…。

「オレの身体の中にだって、日本人の血が流れているわけだし」

ふとヤマトの言葉が頭に甦る。
彼の言葉にはGAPに左右されていない”生“を感じられた。
どこか人間らしさを伺うことができる。

そんな彼を眩しく思えた。


「ミウ?」
心配そうなユウマの声がミウを呼び戻した。

「あ、ごめん。眠いのかな?」
なんとなく取り作った。

「そうか。早く寝たほうがいいな」
ユウマはさらに心配そうになった。

「大丈夫だよ…でももう寝るね」

「わかった。暖かくするんだぞ。おやすみ」

「うん、ありがとう。また明日。おやすみ」
そういって電話を切った。


けっきょく最後までヤマトとのことを話せなかった。

自分でも説明できないなにかがそうさせたのだろう。

ミウの心に、かすかな波がたちはじめていた。

ヤマト・グリーンウッドという心地よい風が、ミウの心の不安を消し去るようであった。

ユウマに対する想いは…。

自分の置かれた立場は…。

心とは裏腹に頭の中はぐるぐると渦巻いている。

「どうしちゃったんだろ…」
ミウは呟いた。
瞳を閉じると首を横に振って、ベッドへダイブした。



「すごい音がしたけど、どうしたの?」
部屋の外から心配した母の声がした。

「ううん。なんでもなぁい」
慌てて答えた。

「そう?。ならいいけどぉ…おやすみ」

「うん。おやすみなさい」
溜め息をつくと、携帯にメールが届いた。

『おけ!』
カオナからだ。

「もうっ!」

もう一度、溜め息を漏らして毛布を頭まで被った。