母と食事の用意を済ませた頃に父も仕事から帰ってきた。
食卓に並んだ料理と大好きな酒を家族で楽しむことが好きな父は、終始笑顔を絶やさない。

ミウもそんな父や母を心から愛していた。

食事の片づけをして、シャワーを浴びて自室に戻った。

ベッド脇のコーナーテーブルに置き忘れた携帯電話が明滅しているのに気がついた。
カオナからのメールと、ユウマの着信を知らせていた。

『今日 例のパウンドケーキかったよぉ やばいよ マジでうまい』
この間、友達から聞いたケーキ屋に行ったようだ。
カオナは甘い物に目がない。
ミウも嫌いではないが、カオナほどではない。
それでもカオナの文章は充分に興味をそそられる。
不思議なのは、あれだけ甘い物を大量に食べているはずなのに、カオナはモデル並の均等のとれた体型なとこだ。
ミウはどちらかといえば痩せ型で女性的な魅力がないと感じているので、カオナのような女性的な身体を羨ましく思うときもある。
なによりも、カオナの自由奔放な性格と振る舞いが好きだった。

『ずるい 自分だけ 今度一緒に行くからね』
そう書いて返信した。

メールが送信されると同時に着信があった。

ユウマからだ。

「もしもし」
慌てて通話する。

「どうした? 忙しいのか?」
ユウマの声が受話機から漏れる。

「ううん。カオナにメール送ったとこだったから」

「そか」

「今 シャワー浴びてた」

「風邪ひくなよ」

「ありがと」

「今日、独りで大丈夫だったか?。なかなか連絡なかったから心配したぞ」

「ごめん。図書室で本を探してたら遅くなっちゃって」

「ま、なにもならいいんだけどね」

「うん」

二人の会話は普段と変わりない。