話し声やたまに聞こえるキーボードを叩く音。

 仕事の疲れもあって、うとうとしてきた俺は睡魔に勝てず居眠り。

「……先生。長谷川先生。起きてください。終わりましたよ」

「ん……ああ、ごめん。つい…」

 目の前には優しく微笑むブラウス姿の千紗。

 抱きしめたい衝動に駆られながらも、すくっと立ち上がり柱時計に目を遣れば6時過ぎ。

「体調悪そうだし送ってくよ」

「大丈夫です。雄太郎と帰りますから」

 ずんっと、何か重いものがのしかかってきた様な、苦しい感じ。

 自分の彼女が、他の男と帰るってどうよ?

 ちゃんと理解してるつもりでも、やっぱり苛々するっていうかモヤモヤする。

 それを紛らわすため、まだテーブルに残っていたファイルを棚にしまった。

 ファイルを片付ける作業をしている隣で、千紗とミドリさんが違うファイルをめくる。

「これじゃないわね」

「あれかな?ほら、一番上の赤いテープが貼ってある白いファイル」

「ホント?」

 背の高い千紗が、腕を伸ばした時。

 袖口のボタンがしていなかったのか、ブラウスが肘の辺りまで滑った。