「で?俺には、言えないの?」

 その不安そうな瞳から逃げようと、俯くが体勢が体勢なだけあって、タツキは下から覗きこむ。

「千紗?言えるの?言えないの?」

「………分からないわ」

「何で?」

「タツキが好きだから」

 言ってしまったらその後が怖いんじゃないかって思ってしまう。

 だって、もしタツキに「うん、そうだね」なんて、言われた時には、私、どうにかなっちゃいそうなんだもの。

「俺も千紗のこと、好きだよ?」

 どうもその口調が「俺を信じて?」って、言われてる気がして。

 恐る恐る、グロスの付いたワイシャツの部分に指を差した。

 私の指先を追って見たタツキは「何、コレ?」と、自分でも驚いてる様子。

「……あと、ね?香水の香りもするのよ。
別に、タツキを疑ってるわけじゃなくてっ。もちろん、学校からすぐこっちに迎えに来てもらったことも分かってるわ」

「……カナコさんか?」

「高田奏子さん?」

「うん。あれ?知り合い?」

「ううん。その、今日、タツキと奏子さんが空き教室に入って行くの見たの。勉強、教えてたんでしょ?」

 ちゃんと私の口から言わないと、タツキのことを信じてない、みたいに聞こえるのは何故かしら?

 だから、不思議と自分の言った言葉をフォローするような会話になってしまった。