スパンッ!と軽快な音と共に、部屋に入ればこれまた悲惨。

 机の上なんてグッチャグチャで、カーテンなんかは引き裂かれ、木製のベッドは爪研ぎにされてる。

「……コマチ?」

 部屋の隅で固まってる白い物体に優しく声をかけしゃがみ、手を広げた。

 コマチは「ニャア?」と、不機嫌そうに鳴き、こちらに顔を見せる。

「私が悪かったわ。怒らないから、おいで」

 ゆっくりと起き上がるコマチは、これまたゆったりと私に近づき顔をこすりつけた。

 コマチの可愛いらしさに部屋の片付けを後回しにし、オモチャの猫じゃらしを使って戯れる。

 猫じゃらしに飽きたコマチの頭や顎を撫でていると、車のエンジン音とドアの閉まる音が聞こえた。

 急いで廊下に出て走り玄関に向かうと、ちょうど引き戸が開く瞬間で。

「おかえりなさい、タツキ」

「あ……、千紗」

 私が玄関にいるとは思わなかったのか、目を見開いて驚いてるタツキに、「ただいま、くらい言いなさいよ」と口を尖らせた。