普通車より高い位置から、町並みを見れるのと、バス独特の揺れ。

 あれホント眠くなるのよね、って思っておいて寝ないんだけど。

 バス停に並ぶ人達がそわそわし始めたのを感じ、左を見ればバスがやって来た。

 2分の遅れを感じさせない車体に乗り込み、座席を確保しうとうとする。

 ちょうど首がカクンとなった時、降りるバス停の名前が告げられたため慌ててボタンを押した。

 バスから降り、5分くらい歩きやっと玄関の前。

 引き戸を開けると、待ってました、と言わんばかりの葛城さんとその他数人のお手伝いさん達。

『お帰りなさいませ、千紗お嬢様』

「た、ただいま……」

 丁寧にかつ声も動作も合わせる様子に、どこかのメイドカフェかっ!と叫びたくなる。

 そんな衝動を押さえながら、部屋に行くために廊下を歩くと、所々に引っ掻き傷。

「……葛城さん?」

「はい。何でしょう?」

 葛城さんの顔から手元に視線を下げると、絆創膏だらけの手。

 他のお手伝いさんの手元や手首を見れば、軽くだが包帯をしている人もいる。

「コマチがごめんなさい。皆さん仕事に戻ってください」

 軽く会釈をし、部屋へと急ぐ。