顔を下に下げようとした時、『逃がさないよ』と、言うかのように、タツキの片手が私の頭を掴んだ。
やばい、と思った時には時すでに遅し。
無理矢理口を割って入ってきた舌は、私の何もかもを絡め取るかのように荒く動き回る。
おまけなんだか知らないが、腰を支えていた手は、身体のラインを舐めるかのように執拗に撫で回し、お尻を掴む。
もう、無理、耐えられない。
タツキの胸をせわしく叩き、キスを止めるように訴える。
「もう、無理なの?」
少し唇をずらし、聞いてくるタツキに何度も頷く。
しょうがないなぁ、といった感じに頭を掴んでいた手が離された。
体にあまり力が入らないのと、ぼーっとするのとで、トンとタツキの肩に額をつける。
「そんなに良かったの?」
「……ばっ。違うわよ……」
キスをしている間、タツキからの愛が伝わってきた感じがして。
ほら、雄太郎が変なこと言ったじゃない?
カナコっていう人が、タツキを口説こうとしてるとかなんとかって。
その人に“勝った”とも“タツキは私の”とも、思ってしまったことが怖かった。
……なぜ、こんなに意地になってるのよ。
たぶん、さっきそのまま抱かれていたとしてもタツキを責めなかったかなって。
…………熱でもあるのかしら?