「そういえば、タツキさんって塾講師だったんだよねぇ?」
「そうよ」
「何、教えてたの?」
「数学と理科だっけ」
「学校(こっち)に来てからはぁ?」
「……知らない」
一瞬、考えて見たものの、そんな話したことない。
だいたい、塾講師だった時だって、タツキの部屋を掃除しようと思って(ちゃんと許可は取ったわよ?)入ったら数学と理科のプリントが散らばってたから知ったようなもので。
「えぇ〜?仮にも、オクサマでしょ?」
「まだなってないわよ」
「じゃあ、あたしが聞いてあげる」
「別にいいわよ」と、言ったものの、遅かったのかミドリはタツキの名前を呼んでいた。
「タツキさんは、教科担当って何?」
「ん?理科だよ。ほら、村上先生って理科の先生だったでしょ?」
「そっかぁ。じゃあ、あたしとちぃに生物教えて?」
「うん。いいよ」
ふわっとミドリに微笑むタツキは、そのまま、私にも同じ笑顔を向けた。
別に教わらなくても分かるんだけど。
なんて、ミドリに言っても流されそうだったからやめた。