ふいに訪れたこの機会に、私は慌ててしまった。

いつの間にか私は、藤橋ユウヤと話すことが一連のハト事件を食い止めることだと信じていた。

私は言葉をさがす。

ねぇ、あなたは、この街で何をしているの?

あなたは、ハトの事件を何か知っているの?

あなたは、サキと何を話していたの?

ハトを殺しているのは、あなたなの?

そのどれもが唐突で、言葉にできるものではなかった。

私は、とりとめのないような思考をまとめるようにがんばってみたけど、うまくいかなかった。

そうこうしている間に、藤橋ユウヤが私に気付いた。
「あ、藤橋君。まだいたんだねー、部活とか入らない人なんだ。」

私は慌てて笑顔を取り繕う。

藤橋ユウヤは、いつものような笑顔を見せてくれなかった。

その瞳には、静かな哀しみがたたずんでいた。

今まで感情の宿らなかった無機質な瞳は、今日は表情を変えて私に何かを訴えかけるようにも思えた。

その瞳は、私が今まで藤橋ユウヤに抱いていた恐怖感を和らげてしまった。