今日はサキとミヤと渋谷に行く予定だった。

ユキは塾に行かないとと言っていたけど、たぶん未だに股下のやぶれたズボンで登校してくる彼氏とデートなのだろう。ユキの心がほのかにピンクに染まっていたし、何より顔がほころびまくっていてたまらなく可愛かった。

私は心の中で少しノラが気になったから、約束をキャンセルしてノラの顔でも見に行こうかなとも思ったけど、やっぱり二人に悪いから付き合うことにした。

担任の高橋がいつものように遅れて終礼を機会的にはじめた。

私とミヤは、生徒用の玄関のあたりでサキに会った。

あ、サキ。

「おつかれ〜、電話かかんなかったよ〜、どうしたの??」

あ、机の中に忘れちゃった。

「ごめん!ちょっとひとっ走りしてくるね!」

私は仕方がないので携帯を取りにもどる。

二人の前では、わざと走ってみせたけど、少し恥ずかしくなったので角を曲がってすぐに歩きはじめた。

まぁ、もちろん足音でわかるんだろうけどそれも含めて愛嬌かな。

後ろから二人の笑い声が聞こえるのがわかった。

私も、ちょっとだけにやけた。

すでに誰もいなくなった教室は寂しいものだった。

私は机の中の自分の携帯に手をのばす。

そしてその時になってようやく窓際の人間に気付いた。

誰もいなくなったはずの教室に、藤橋ユウヤだけが一人たたずんでいた。

藤橋ユウヤは、静かに窓から校庭を眺めていた。

そこにいた藤橋ユウヤは私の知っている藤橋ユウヤとは違う藤橋ユウヤだった。