「――えっ! 君が奈々ちゃん!?」

「はい」

「んな!? なっ、奈々……何サラッと来てんねん……」


あっさりとステージに現れた奈々は、ツンとして答える。


「呼ばれたら来るしかないじゃない」


いやまぁ……そうかもしれへんけど……。


「おい、めっちゃ美少女じゃん……っ!」


玄が俺の後ろでボソボソ話すけど、当たり前やろ!っと心の中でしか突っ込めへん。


しかし……今日の奈々はなんちゅーか……。


「なぁに? ジロジロ見ないでちょうだい」


腕を組んで呆れたように話す奈々の私服はケミカルウォッシュのスキニーデニムに、サーモンピンクのドルフィントップス。


ゴールドのシンプルなアクセを腕や首に付けて、長い黒髪もゆる巻きにしとる。


大人っぽいのは毎度のことやけど……お嬢っぽくないっちゅーか、更に大人やん……。


めっちゃ綺麗! つか細っ! 折れそう!


「おい……翔太にはもったいねぇよ」

「うっさいわ玄!」


なんやねん、ホンマに。


ごっつぅ好きや……。


私服だって、ホンマは透の方がタイプやのに……。アカン。俺重症と違うん…?


「いやいや、めっちゃ美少女ですねー! 翔太の1個下には見えないわ~! でっ、お返事は!?」

「ばっ! お前何勝手に進行してんねん! アホ!」


慌てて玄からマイクを奪い返すと、ニヤリと笑われた。


「じゃあ自分で進行しろよ~」

「分かっとるわ!」


赤くなる顔を気持ちで抑えながら、奈々に向き直る。


「奈々、今日は来てくれておおきに! めっちゃ嬉しい」

「……あんなに誘われちゃぁね」


それでも来てくれたやん。俺の大技に間に合ったやん。紛れもなく俺の為だけに、来てくれたんや。