[angle:翔太]
「翔太~! リハやんぞっ」
寒さが厳しくなってきた12月某日、夕方4時。今日はクラブ“SPLASH”で夜7時からダンスイベントがある。
ダンスクラブに通う奴ら6人で組んだ俺のチーム『daring』は大トリを任された。
「なあ、俺の大技最後にやりたいねんけど」
「はぁ!? まだ完成したばっかじゃん! 最後に失敗したらブーイングの嵐だろーが! ダメ! 予定通り中盤にやれっ」
チーム内で1番付き合いが長い玄(まこと)が眉を吊り上げて言った。
「頼むわ~! ホンマ成功させる! 失敗なんかあり得へんしっ!」
玄の目の前で頭を下げ両手を叩くと、呆れたような溜め息が聞こえた。
「つーか当日に何言ってんだよ」
「賭や! 告白するかせぇへんかの瀬戸際やねんっ!」
「告白ぅ!?」
「玄に恋心なんか分かれへんやろ」
スニーカーの爪先を床にトンッと叩きつけて、腕を伸ばすストレッチをしながらステージに向かう。
すると追い掛けてきた玄が焦ったように「まさか来んの!?」と言った。
「微妙やな……。来れたとしても途中からやろーし。せやから大技ギリギリまで出したないねん! ホンマこのとーりっ! 頼むわ!」
「……お前どんだけ好きなんだよ」
「めちゃめちゃ好きや!」
そう、めちゃめちゃ好きや。
あれは忘れもせん、春のこと。