「……ショータだ」

「出ていいよ」

「ゴメンね。――モシモシ?」


電話に出た昴を確認して、あたしは左手で頬杖をつきホットケーキを食べずに見つめる。


……今までもあったよ、こういうこと。


近付こうとすると、突き放される。手を伸ばしても、叩き落される。


でも気にしないで笑ってたの。いつか話してくれるって、いつか奈々から寄り添ってくれるって、そう信じてたから。


だって奈々と過ごした日々は、楽しいことのほうが多かった。



グスッと鼻をすすって、首を下にぶらんと垂らす。


「奈々のバカ。大魔王。……不器用」


「誰が大魔王ですって?」


…………。


「――な……っ!」


奈々!! 何で!? 昴は!? 昴はどこに行ったの!?


昴が座っていたはずの向かい側の席には、なぜか奈々が腰掛けていた。


ちょっ……ちょっと待って! 待って待って! あたしまだ奈々と顔合わす準備出来てない……!



「ごめんね」


ひとり焦っていると、落ち着いた声が聞こえた。驚きから奈々を見ると、真っ直ぐあたしを見つめている。


「昨日はごめんなさい」


奈々は眉を下げて悲しそうに目を伏せたけれど、言葉が出てこなかった。


「私、怖かったのよ。あの家に縛られて生きてきたから、自分がしてきたことが全てだと思ってたの」


俯いてぽつりぽつりと話し始めた奈々に、あたしの眉も下がり始める。