うぅっ……寒いっ!
温かい教室と違って、廊下はまさに極寒。
ブレザーの下に着たパーカーを首元に引っ張りながら、小走り気味に自販機へ向かう。
「お。透じゃん」
「――隼人! どうしたの、遅刻?」
自販機に向かってる途中、本来3階にいるはずの隼人に出くわした。
「まーな。どこ行くわけ」
「自販機」
「え? 俺のも買ってくれんの? いやいや悪いねー」
「隼人ウザイ」
「だから先輩だっつぅの!」
歩き出したあたしの横で怒ってる隼人は一応2個上の3年生だけど、全く先輩って感じがしない。
出逢いも最悪だったけど、今ではすっかり仲良しだもんなぁ。
「あ! 奈々いたーっ」
体育館に繋がる渡り廊下に出ると、ちょうど奈々が歩いていた。振り返った奈々に駆け寄れば、綺麗な唇が開く。
「あれ隼人先輩よね」
「うん。遅刻したんだってー」
寒さのあまり奈々の腕に抱き付くと、ズボンのポケットに手を突っ込んで気だるそうに歩いてくる隼人に奈々が挨拶をした。
「おはよう御座います隼人先輩。遅刻して大丈夫なんですか? 受験生なのに」
「おー。まあ、余裕。俺スポーツ推薦で来てくれって言われてっから、もう決まったも同然」
「うっそ! 隼人を欲しい大学なんてあんの!?」
「はぁ!? しばくぞテメェッ!」
信じられない……。
確かに隼人はバスケ部の元エースだけあって、うまいとは思ってたけど。
引退した今もよくバスケ部に顔出して、大聖たちの指導してるもんなぁ。