気付けば、端正な昴の顔が目の前にあった。
「――!?」
驚いて後ろに仰け反ったあたしを見て、昴がいじめっ子みたいに唇の両端を上げた。
「トールにKissされちゃった」
「は……はひ……」
かーっと赤くなる顔は、確かにその事実を表してる。
ごめんなさい! ほぼ無意識だったけど庶民が王子を襲ってごめんなさい! 恥ずかしい!
正座して真っ赤になっていると、昴はやっと起き上がって俯きがちのあたしの顔を覗いた。
「One more」
「んなっ!」
「ダメ?」
「~~っ」
昴はズルい。
あたしが恥ずかしいから嫌だって思ってるの、分かってるくせに。
そんな綺麗な顔して、大好きな笑顔を見せて。
「トール」
「……なにさ」
「ダイスキ」
「……」
そんなこと言われたら拒めないって分かってるでしょ?
優しく微笑む昴の頬に、ためらいがちに手を伸ばす。
ほんとにズルい。
いつになってもあたしは、昴に落ちてくばかりだ。
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