「――あ! 奈々!」
昼休みに奈々と湊磨、大聖と忍と一緒に学食に行くと、いつもの如く翔太が奈々を呼んだ。
あたしは湊磨と大聖の後ろに隠れて、忍と話している。
「つか透は? どこやねん」
「いないわよ」
奈々は1人翔太たちの席に近づき、腕を組んで立っている。昴の隣には、当たり前のようにレイが座っていた。
「いないって何でやねん!」
「休んでるの?」
翔太とキョウの問いに答えず、奈々は座ってる昴を見下ろす。
「透を傷つけたこと、自覚してるんでしょうね? 知らないとは言わせないわ」
「…………」
「聞いてるの? あなた、透を傷つけたのよ? その横にいるやつ、一体なんなの?」
「ちょお落ち着けや奈々! 昴だって……」
「悩んでるとでも言いたいわけ? ふざけないでちょうだい」
「……はぁ……。アカン。キレとるわ」
翔太は両手を上げて降参のポーズ。キョウは黙々とご飯を食べて、奈々と昴を交互に見ている。
レイは奈々を睨んで、昴は目を伏せていた。
「よく覚えときなさい、昴。次また透を傷つけたら私は許さないわ。謝っても、土下座しても、泣いて懇願したって、透を取り戻すことは叶わない。一生ね」
目を伏せていた昴は、ゆっくり奈々を見上げた。
「それでもいいなら透を傷つけてみなさい。二度と、透に会えなくさせてやるから」
……奈々。
涙が出そうになるのをギュッとこらえる。
……昴、どうして何も言わないの? 昨日のは誤解だって、そう言ってはくれないの?
奈々は昴を睨んでから、淡い期待が打ち砕かれたあたしの元へ戻ってきた。
「うちの学食まあまあなのよ? 何食べる?」
清楚なお嬢様の仮面をかぶった奈々が、だけど本当に優しい奈々が、笑いかけてくれる。
ありがとう、奈々。