『レライエ? アメリカの友達が何で日本にいるのよ』
「知らないよー……遊びに来たとか?」
幸せだったバレンタインが過ぎ去り、月明かりに照らされる夜。あたしは奈々と電話していた。
『昴は何て言ってたの?』
「幼なじみだって。幼稚園の頃から中学まで一緒だったみたい。懐かしいって喜んでた……」
懐かしい。
そう言った昴の笑顔が頭から離れない。
『女の子なのかしら』
「女の子。日本では女の子がチョコ渡すんだねって、手紙に書いてあったもん」
昴の笑顔は懐かしいというより、愛しそうに感じた。
『まあ遊びに来てるだけなら、問題ないんじゃない? 気にすることないわよ』
「そうだといいけどさ……」
軽く話して、また明日と電話を切った。
左手の薬指に光るペアリング。そっと撫でて、不安がる心を静める。
この黒い、心にかかった靄みたいなのは一体何なんだろう。
ジワジワと黒い靄が広がっていく。
ヤキモチというより、やっぱり不安になってしまう。
左手を右手でギュッと包み込んで、目を瞑った。
今すぐ昴に、スキだと言ってほしい。