あたしはカバンの中から財布を取り出して、席を立つ。すると奈々も「私も行こうかしら」と腰を上げた。
「奈々だって喉乾いてたんじゃーんっ!」
「チョコ見てたらコーヒーが飲みたくなっただけよ。どうせ透はまた甘いジュースでしょ」
「違いますぅー。あたしが飲みたいのは、苺オレィッ!」
「友達だと思われたくないわ」
オレィッ!とよく分からないポーズをしたあたしを冷ややかな目で見て、奈々は財布を持ってさっさと教室を出て行った。
奈々のバカッ! ひどい!
ひとり取り残されたあたしはトボトボと歩き、教室を出ようとすると声を掛けられた。
「自販機行くなら俺の分も買ってくるべきじゃね?」
「あたしはパシリじゃないんだけどっ!」
机に腰掛けて「はん?」と眉を寄せるのはクラスの委員長、忍。
「俺のも頼んでいい?」
「だから何であたしがっ!」
忍が腰掛ける机の椅子に座って、すでに財布を取り出していたのはバスケ仲間の大聖だった。
「ふたりともただ単に寒い廊下に出たくないだけでしょっ」
「俺コーラな」
聞いちゃいませんね!
140円を差し出す、相変わらず自由な忍と爽やかな笑顔を見せる大聖から渋々お金を受け取る。
「大聖は何が飲みたいのさ」
「緑茶。ホットで」
おじいちゃんか。
「もー……次は自分で買いに行ってよ!?」
「ありがとなーっ」
怒りながら踵を返したあたしに大聖だけがそう言って、忍のコーラは振りまくってから渡そうと思いながら教室を出た。