あたしと忍はただ「頑張れ」と言っていただけなんだけど、内心この彼女に押し倒されでもしたら湊磨の骨ボッキボキに折れるんじゃないかなって心配したりもして……。


でも、いいの。湊磨が幸せそうだから、いいの。美女と野獣ってよく言うけど、それが逆だったって話なの!



「まあいいじゃん。結局湊磨は透のこと何とも思ってなかったんだし」


相変わらず上手くまとめるキョウに「せやなぁ」と笑う。


「ほんま驚いたわぁ~。俺らみんな言ってたんやで? 湊磨は絶対透を狙っとる!って」

「あたし全然そんな風に思わなかったけどな~……。湊磨はスキンシップが好きなだけなんだよ。犬みたいに」


あたしの発言に、みんな一斉に呆れた顔をした。


「これだから鈍いって嫌よね」

「せやから透はもっと自覚した方がええで?」

「トール、カワイーんだから」

「今回はたまたま湊磨の趣味が不思議だったから良かったけどねぇ」


な……なぜあたしが責められてる感たっぷりなんだろうか……。



あの日、昴たちはこりゃマズいと思い、ゲーセンまで尾行して陰から見ていたらしい。


昴たちには悪いことしたかも、なんて思っていたりするけどあたしも忍も湊磨の好きなタイプを知ってたからなぁ……。


今回ばかりは奈々の勘も役に立たなかったみたいだし。


奈々の予想を裏切るとは、湊磨って凄いかも……。



「そういやさぁ、もーすぐあれやんな!? あれ!」


突然緩みまくった笑顔を奈々に見せる翔太に、昼食を食べ進めるあたしの手が止まる。


「あれって何よ」


あくまで冷静に言う奈々は、翔太のキラキラ輝く瞳をうんざりした顔で見返した。


「バレンタインやん! チョコ! 俺生チョコ好きやねん!」

「だから何よ」


あたしと昴とキョウは、黙ってその光景を見つめる。


「作ってくれるんやろ?」

「何言ってるの? チョコは買うものでしょ?」


「バカじゃないの」と付け足した奈々は翔太から視線を逸らして箸を進め始めた。


あぁ……翔太が砂になっていく……。


だけどすぐ立ち直るのが翔太のすごいところ!