「湊磨ってさぁ~……好きな子のタイプ変わってるよね」
「変わってるのレベルじゃないわよ」
奈々は視線を落としていた携帯をあたしに返して、箸を持った。
携帯画面に映るのは、湊磨とひとりの……女の、子……?
ううん! 女の子! 女の子なの! きっとそう!
湊磨が転校してきてから1ヶ月がたった頃。湊磨に彼女が出来た。
転校してきて割とすぐ気になる子が出来たと言って、すでに友達になってプリクラまで撮ったと言うので、見せてもらったのだ。
そこにたまたま居合わせた忍もあたしと一緒にプリクラ拝見。正直に言うと、久々にあんな衝撃を受けた。
そんな衝撃的な彼女と、湊磨が最近付き合ったんだけど……。
「湊磨って趣味悪いのね」
「そんなこと言っちゃダメ!」
「本当のこと言ってるだけじゃない」
……イケメン湊磨が溺愛する彼女は、黒髪のおさげで、糸目の女の子。
背が大きくて、ちょっと……いやかなり立派な体格をしていて……湊磨よりちょっと顔が大きいかな?って感じで……。
まあ、笑顔は愛嬌があって可愛いかな……。
「美男子と珍獣ってとこかしら」
「奈々ぁぁぁあああ!!!」
失礼! 誰を好きになるかなんて、湊磨の自由なんだから!
「なに盛り上がっとるん?」
「あ、体育お疲れ様ー」
翔太が奈々の隣に座り、あたしの右に昴、左にキョウが座った。
「湊磨の彼女の話よ」
奈々がそう言うと、苦笑する翔太と肩を震わせるキョウ。
あのゲーセンの日。湊磨があたしを好きだと信じて疑わない昴たちに、湊磨の好きな女の子を見せてあげた。
すると奈々の「趣味悪いわね」から始まり、翔太は「……彼女プロレスラーなん?」と言った。
「世の中って不思議だね」とキョウは付け足して、昴は「トールじゃないなら、OK」と安心したあの日。
湊磨は「超可愛くない!? 見た瞬間一目惚れしちゃってさぁっ!」と、ひとりで盛り上がっていた。