訳が分からず後ろを向こうとしたら昴の右手があたしの首と顎に回って固定され、左手はがっちりあたしを抱き締めて、振り返ることが出来ない。
何!? 痛いっていうかくすぐったいっていうか、何なの!?
混乱してる間にも、何度も何度も首にキスが落とされる。
生温かい、肌を這う舌の感触。
鈍い痛みを与える歯の感触。
吸いついては離れる唇の感触。
「――……」
ケーキより先にって……ケーキの前にあたしを食べるってこと!?
「すすす昴っ!」
ゾクゾクする首を押さえて昴からのキスを阻止すると、抱き締める力が緩み、勢い良く振り向いて昴に言い放った。
「あたしは食べられないよ!?」
人間だもの! 共食いになっちゃうよ!
「……たべちゃ、ダメ?」
シュンとする昴に例外なくキュンとするあたし。
いや昴になら食べられてもいいけど、さすがに人間は食べられないじゃん。
熱でまだ頭がぼんやりしてるんだね?
「お腹空いてるなら、何か持ってくるよ?」
そう言うと昴は少し目を見開いてから、俯いてしまった。
「ううん……。そか……トール……うん……」
「うん? 何もいらないの?」
ふぅ……と溜め息なのか何なのか分からないけど、昴は吐息を漏らしてからゆっくりと顔を上げる。