詳しく問いただすと、奈々のお見合い相手はライアンのお父さんで、徠(らい)さん。


ライアンが赤ちゃんの頃、奥さんと離婚したらしい。


徠さんは癒王亭のオーナーで、奈々のお父さんが事業を拡大したいらしく、その先駆けとしてぜひ癒王亭と提携を……ってことで、このお見合いが成立したとのこと。



徠さんは奈々のことをライアンとキョウから聞いていて、結婚する気はさらさらなかったらしく、奈々は結婚しなくても提携を結べると分かっていたのでお見合いを受けたらしい。



「さすがに兄の息子の友達で、高校1年生の子と結婚はねぇ……。それにライアンがお世話になったし、提携を結ぶこと自体こちらとしても有難いから。お見合いというより商談だったよね」


アハハッと軽く笑う徠さんに、翔太はギッ!と精一杯キョウを睨む。


「キョウは何やねん! このこと知ってたんやろ!? 言えや!」

「え? だって聞かれなかったし」

「……もうええ……お前はそういう奴やった……」


気持ちは分かるよ翔太。あたしも今脱力感でいっぱいだもの……。


ちらりと奈々を見ると、それはそれは満足そうに口の端を上げていた。



……奈々はきっと翔太のこと試したんだ。


翔太の口からもう一度告白されたくて。一度目の告白ではヤキモチを妬いて素直になれなかったから。


お見合いを壊しに来てくれたら……ってとこまで考えてたのかは分からないけど、翔太が何かアクションを起こすのを待っていたに違いない。



あたしの時といい自分の時といい……大人しくしてられないんですか……?


仮にも本物のお嬢様でしょ。

何なの、反動? 普段清楚なお嬢様の仮面かぶってる反動? ストレス発散? とんでもないっすね!


「あたしはあの時の涙を信じていたのに……」


ぽつりと呟くと、奈々はあたしと目を合わせて妖艶に微笑んだ。



「普通に付き合うなんてつまらないでしょう?」

「え!? 今何て言うたん奈々っ!」

「お黙り翔太」




ロマンチストな奈々の陰謀。


かなり振り回されたけど、奈々が幸せそうだからまぁいっか……。


なんて思うあたしは、相当奈々に甘いかもしれない。