「三神」
「はい」
「向井」
「はーい」
季節が秋から冬になった頃。出欠を確認してる担任に返事をしながら、校庭にうっすらと積もった雪を見つめていた。
……お昼には溶けちゃうかな。
空を見上げれば今日は見事に晴れで、1センチも積もっていない雪は簡単に溶けてしまうはず。
昴、残念がらないといいけど。
「――じゃあHR終わり。今日も勉学に励むように」
担任が教壇から降りると教室は一気に騒がしくなり、あたしは机に置いていた紙パックのジュースを手に取った。
「あ。飲み終わってたんだった」
そう言いながら紙パックを片手で握りつぶすと、前の席に座っていた奈々が振り返る。
「透、朝コンビニで買ったばかりじゃない。飲むの早すぎよ」
「だって喉乾くんだもん」
ひしゃげた紙パックを教室の隅にあるゴミ箱に投げると、ガコンッと音を立てて綺麗に入った。
「甘いものばかり食べるからでしょ」
呆れたように奈々が見遣ったのは、窓の外にあるチョコレートの箱。窓枠に立て掛けるように置かれたそれは、あたしのおやつ。
暖房がきいた教室内に置いてると、チョコ柔くなっちゃうからね。
「冬はこんな近くに簡易冷蔵庫があるんだから、使わないと!」
「太陽の光で溶ければいいのに」
「……」
今日も変わらず、どれだけ小さくても不幸を望む奈々ちゃんですね……。