どうしても重なってしまう。たまに、わからなくなるんだ。今目の前にいるのは、妃憂なのか、妃紗なのかが。

妃憂と一緒にいると、妃紗は眠っているという事実を忘れそうになってしまう。


どっちなんだろう…。俺が、本当に好きなのは…果たしてどっちなんだろう?

好きだよ、と。
妃憂にちゃんと心の底から言えていますか?





「憎しみかもしれない」


真っ暗な部屋。

ぽつり、ぽつり。カーテンの向こうから小さな雨音が聞こえ始める。

あぁ、やっぱり今日は雨なんだな。



「シイヤの言う〝好き〟はさ、憎悪の裏返しかもしれないよ。もともと愛情を傾けていて、相手を好きになってなきゃ、嫌いになんてなれるはずない。憎いなんて思うはずがない」


落ち着いた様子で、言葉を紡ぐ妃憂の唇をぼんやりと眺めていた。

いつの間にやら映画は終わり、真っ黒な背景に赤い文字で流れているエンドロール。ハッピーエンドかバッドエンド。迎えたのはどっちだったのだろうか?



「錯覚してるのよ。シイヤはわたしを憎いと思ってんのかもね、気づけないだけで…」



なぁ…
誰か、教えて下さい。

俺たちを待つエンディングはどちらなのですか?

俺は愛と憎しみを履き違えているのでしょうか…?



誰に問いかけているのかもわからない。当たり前に、答えなんて見えるはずもない。

さっきよりも強さを増した雨音。

テレビ画面からは、完全に光が消えた。




【愛情と哀情と、憎悪と】

((俺が君に抱くものは?))
((店でなら、ホストの俺としてなら…こんな感情、全部全部必要ないものなのに))