やっぱり妃紗が目覚めること?あいつらに見つからずに暮らすこと?いや、俺がいなくなることなのか?

…わからない。わかるようで、全然わからないんだ。本当の答えを知っているのは、いつだって本人のみ。


どんなに考えたって、俺には妃憂の救いがなんなのかはわからないけれど…



「そんなことねぇよ。誰にだって、ちゃんと救いはあるさ」

だって俺にとって、最後の救いが妃憂なんだから。



「…なに言ってんの?あるわけないじゃんそんなのっ!」

しかし俺の言ったことが気に入らないのか、妃憂が睨むような目つきへと変わった。


「本当にそんなものあるってんなら、なんで…なんであんな目に遭わなきゃだめだったの?なんで妃紗は起きないのっ?!誰も助けてくれなかった…。みんなわたしと妃紗と…シイヤを引き離そうとしたじゃんか!」


俺の両肩に細い腕を置き、絶望に染まった瞳で訴えかけてくる。

とても…痛痛しい姿。ギリギリと胸が軋む。



「どんなに暗いとこで蹲っても希望なんて見えてこないよ…。救いなんて…そんなものっ」

「絶対にあるよ」


妃憂の手の上に自分の手を重ねた。

伝わってくる低い体温に。触れていると、無意識のうちにまたあの日が蘇る。


あの日、君が妃紗を失った日に触れた手も、雨に打たれこんな風に冷たかったっけ…。