「ミケが気に入った?」
「うん、シイヤ以来にね。ミケは新人だけどうざく感じないのよ。なぁんか憎めないし」
グロスがのったピンクのぷるぷるの唇が緩く弧を描く。
「昨日もね、ネックレスあげちゃった!出たばっかの新作なんだって。今日はしてないなぁ…。シイヤはすぐに着けてくれたのにねぇ」
ユキが俺の手首の腕時計に視線を落とす。
店内の微かな照明に当てると、キラキラ小さな光を放つ。
「だってすげぇ気に入ってるから」
時計を一撫でする。ユキは満足そうに微笑んだ。
「でももうそれ結構使ってるよね。そろそろ新しいのほしいんじゃない?」
「まだ大丈夫だって、ありがとな」
「そう?いつでも言ってね?シイヤのためなら、すぐにプレゼントするから!だって」
〝お金ならたくさんありすぎるから〟
ユキは口元だけで笑ってみせた。