「もうっ。さっきのあいつまじむかつく!」

ソファにもたれかかると、早速ユキは口を開いた。


「あたしの視線にオドオドしてさぁ…。水割り作んのもトロいなんて信じられない!」


大きな目を更に大きくさせるユキ。ブルーのカラコンが零れ落ちてしまいそうだ。

言い方も少々大げさな気はするけれど、これはユキの癖。いつだって、彼女は誰かから注目されていたいんだ。裕福な家、恵まれた環境でひとりで育った故の孤独感を紛らわせるために。




「仕方ないよ、まだ新人なんだし。これから覚えてくだろうし、ユキも見守ってやっててよ。なっ?」

「ふーん…そうかな?まぁ、シイヤがそう言うんなら可能性はあるんだろうけど…」


宥めるように頭を撫でてやると、不服そうではあるものの、渋々といった感じで数回頷いた。




「その点、ミケはやっぱりちがうわねー」

くすりと笑い、ユキがある卓へ目を向ける。


そこにはミケってかわいー!と言われ、かなり酔ってそうな客に髪をくしゃくしゃにされているミケの姿。

あいつ…思いきり不機嫌な顔してんじゃん。

まぁ、あんな風にあからさまに嫌そうな顔しても、逆にかわいいと言われるのもある意味才能なんだろうけど。

得なやつだよな。