綺麗な照明に照らされた店内。寄り添う男女。囁かれる愛の言葉。

一見、煌びやかな世界。

でも…
裏を返せばそこは、嘘と金と欲望にまみれた真っ黒な世界。







「シイヤさーん」


ホストクラブ【トワイライト】スタッフルーム。

まだ開店までは時間があった。適当に置かれていた誰のかもわからない雑誌に目を通していると、なんとも力の抜けるような声で名前を呼ばれた。




「ちょっと聞きたいことあるんすけど」


そう言って、綺麗にラッピングされたネックレスを差し出してきたのはミケだった。


――ミケ。
全体的に長めの金髪をしていて、前髪からのぞくのはやる気のなさそうな瞳。間延びしたしゃべり方をする。なんともゆるい雰囲気のやつ。でもそれがかわいいと、まだ新人のクセに客からの評判はなかなか上々。

ミケというのはもちろん源氏名。三池(ミイケ)という苗字からとったらしい。猫みたいな名前。まぁ、実際猫みたいに気まぐれで掴めないやつだし、こいつにはぴったりだと思う。





「なに?この袋?」

「これ、昨日ユキさんから貰ったんすけど、やっぱこのブランドって高いんすかー?」


ネックレスを受け取る。目が眩みそうなほどキラキラとした光を放つ。有名な高級ブランドの品物。結構値は張るだろう。

ミケにもうこんな物プレゼントするなんて…ユキらしいな。




「高いもなにもお前なぁ…。このマーク知らねーの?」

「そりゃ一応知ってますけど。俺ブランドとか、あんま興味ないんすよねー」


ミケは取り出したネックレスを手の中で弄ぶ。本当に全く興味がなさそうな瞳で見つめながら。