車は国道から
海岸線へと走る

佳代は
パワーウインドウを
すこし下げた
潮風の匂いがした
二人にとって思い出の薫り

車内ラジオから
懐メロが流れた
チャゲアスの『LOVE SONG』
佳代は彼の顔をみた
丁度目が合った
彼は照れ隠しに煙草を取り出した

この歌で
告白してくれた
すごくうれしかったんだけどな
佳代は窓外に笑みを捧げ
胸の内でいった

車が駐車場に停まる
初めてのデートで食事をした
ビストロ亭

二人の間に
会話は無かった

どこかそわそわしている彼

ワインで乾杯した
食事の味はよくわからなかった

神妙な面持ちな
彼のせいだ

彼は店についてから
三回目のトイレに立った

不器用だよ
サクッと告げればいいのに
佳代は
なにを言われても
ポーカーフェイスを
貫いてやると心に誓った