彼氏がいると照れながら言った結衣がかわいいと思った。
あたしも幸せな恋をしたらこんな風にかわいくなれるのかな…。


入学式も終わり、今度は番号順で席に座る。
結構近くに夏紀がいたからか、あたしは少しほっとした。
周りを見ると、ふと右斜め前の空席に目が止まった。
……入学式なのに休みかな。
右側の列は男子の列。
入学式の日に休むなんてどんな男の子なんだろう…。
隣の男の子は眼鏡をかけたおとなしそうな男の子、早川くん。
正直、仲良くなれそうにないタイプだ。


「おはよーございまーす」
突然、教室に明るい声が響く。
「入学式なのに遅刻してすいません」
はにかみながら謝る男の子。
すごく明るい茶色の髪の毛に、腕まくりした学ラン、笑った口元から見える八重歯。
厳しくて有名なこの中学校には不釣り合い。
「気をつけなさいね。あの空いてる席があなたの席だから」
先生はそう言ってあたしの右斜め前の空席を指す。
彼ははーい、と生返事をしながらこっちに来た。


……結構かっこいい顔してるんだな。
そう思った瞬間、目が合う。
綺麗な二重で大きな瞳は視線を逸らすことを許さなかった。
「初めて見る顔だね」
彼が不思議そうにあたしに尋ねる。
「つい最近引っ越してきたから」
「ふーん……俺、翔人っていうからまあ、仲良くしてな」
にっこり微笑んだ翔人(しょうと)。
子犬みたいでかわいいくせにどこか大人びていてかっこいい。
「あたし神山弥憂。よろしくね」