「では、泣いていないということで」
「本当に泣いてないぞっ」

「で、続きですが、頬の傷が開いて魔王さまのお顔が汚れますのでご容赦を」

「知らんっ」

魔王さまは、離してくれない。

「こうなった時は、私の命で払えと言っておいただろう。なぜ、私の命令に従わない」

「理由なんかいらない、というのでは?」
「許さん」

「では、これが僕の仕事だから」
「許さん」

「では……」

シルキスは、魔王さまの頭を抱いた。

「魔王さまが好きだからです」
「……」

魔王さまと、すぐ近くで見つめ合う。

「……それは、いつもの軽口か?」
「いえ、かなりドキドキして言っています」

「証明してみろ」
「キス、しちゃいますよ」

「許す」

もともと近かった距離を縮めて、キスをした。