風呂場だけあって、ここは全面タイル張りだ。

給排水のための魔道具も完備されている。

とくに水の再利用に関する装置は優秀で、今も遊びで使われた水をせっせと集めてろ過し続けている。

扉のように壊れてなくてよかった。
シルキスは心から思う。

これが壊れていたら、風呂はずっと外だ。
夏はいいが、冬は厳しい。

同時に、夏の陽の下での水浴びはとても楽しい。

とても楽しいので、魔王さまがそれに気がつく前に掃除を終えて、布団をとりこまねばと思った。

「おい、シルキス」
「はい、なんでしょう?」

「やはり、これは楽しくないぞ」
「もうしばらく試せば面白さが分かってきますよ、次は壁のそこを擦ってみてください」

「うむ」
「そうです。素晴らしいです、魔王さま」

……こうして、

魔王さまが完全に飽きるまで、だいたい風呂場の半分が掃除できた。

策士、シルキス。