大斗達はまた騒ぎながら帰って来た。

『夕陽ちゃーんおみやげ♪』

咲は上機嫌で先程のぬいぐるみを渡す。


いつも通りに時間は進み、何食わぬ様子で夕陽と咲はダーツを楽しむ。

『あたしね…何度コレで大斗を射とうと思ったか…』

ポツリ呟くのにキャハハーとウケる夕陽。


あいつら仲良くなってるじゃねぇか?しかし何だ?あの会話?


殿はご立腹の様子でカウンターから2人を見ていた。

そんな様子をマスターはにこにこ眺める。


『何がおかしいんだジジィ!?』


機嫌悪く言う大斗に


『さきー?コイツに当てたらブルの3倍点あげるよ!!』

とマスターの叫び。

咲がスキップで駆けてきたのは言うまでない。


―――――――――――――


午前0時、突然照明が消えた。


パンパンパン!!


各自あらかじめ持っていたクラッカーを鳴らし、わずかに灯りを点ける。


薄暗い中、特別に用意された料理が運ばれ、周りの常連客も大斗の周りに集まってくる。

彼ははわけわからずに突っ立っていた。


・・・?

!!


するとケーキを見つけてやっと状況がわかったらしい。


大斗は数秒それを見つめて、何も言わず踵を返し扉を抜けてスタスタ外に出ていってしまった。


『ちょーっ大斗っ?!』


どっどこ行くのよ大斗…?!


みんな思わずポカンと出入口を見つめる。

反射的に夕陽は大斗を追いかけて行く。



階段を登りきると、そこに彼は立っていた。

真夏の空気が街を暖め、大通りから誰かの楽しそうな笑い声が聞こえる。

夕陽は煙草を点けたまま突っ立っている大斗の背中に彼の名前を呼び掛け前に回る―…。



!!


『『あっ!!』』


瞳が合って2人同時に声をあげた。

大斗はその場にガバッとしゃがみ込み自分の頭をグシャグシャっとして項垂れる。


『顔…真っ赤だし』


隠されて今は見えないが、月に照らされた夜空の中に、火照った大斗の顔を見た。


『あぁぁっっ!!!うるせぇ!!』