『2人は仲直り?』

杏の言葉に

『喧嘩なんてしてないよ』

「ねぇ?」と夕陽を見て答える大斗。


"完全にペースを持っていかれてしまった"


と思う夕陽だが、考えてみたらいつもと変わらない2人である。


『そうそう、片桐さん。後で咲が来るから、会っててくれる?』


あ…咲さんにお礼言ってない…


『うん』

夕陽が優しい顔で答えるのに同じように返す大斗。


バンドというのは騒がしいイメージがあった夕陽だが、杏の歌はバラードばかりで、透き通る彼女の歌声とこのBarがすごく合っていた。


『杏ぅすごいねぇ!!』

『感激したぁ健ちゃんもあんちゃんもカッコイー♪』

夕陽達は大興奮だった。

咲を待つ夕陽はこのままBarに残り、恭次と南深は2人で帰っていった。

杏達は打ち上げに出掛けた、沢山歌ったのに更にカラオケに行くのだそうだ。


―――――――


『久しぶりって、3日ぶりだけど~、はい♪』

そう言って夕陽にカクテルを差し出す。

何も変わらない、いつもと同じ大斗だ。


『大斗君特製「ピンクの涙」ノンアルコール♪』


大斗にしたらキスなんて、きっとそれこそ挨拶程度よね?普段を思い返しても大斗のノリは外人並だし。


『ねぇ?なに人?イタリア?』


夕陽ハッと大斗の顔を見てそう言ってグラスを受けとる。


「はい?訳分からん??」と言う彼を無視し細い2本のストローに口をつける。



しまった…声に出てた…!!


ちょっと恥ずかしくなってグラスを見つめた。


カクテルは2層になっていて、下の方が赤めのピンク、その上は透き通った海のように何色か混ざり合った不思議な色をしている。

何が入っているのか、とってもキレイだ。


『おいしい。』


思わず出てしまったセリフ。大斗は「でしょ?」と得意気。


『ピンクは苺だよ』


と大斗。

ストローを吸ったまま彼の顔を凝視する夕陽。


『ねぇ?なんであたし苺?』


いつも大斗はあたしと苺を繋げる…なんで?