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『ここじゃない?ほら?!』
いつも来る街の一角、人通りの多い道を曲がった少し奥、地図を見ながらやって来たその場所…
【Bar Sweet Blue】
古いアメリカ映画にでてきそうなお洒落なBarだった。
フライヤーが貼られた地下へと階段を降りる。
中には聞いたことのある音楽が響くが、高校生には少し大人びた場所である。
こんなところが近くにあるのは知らなかった2人。
わぁ。こんなとこでやるんだぁ♪
もっとガンガンな所を想像していた夕陽。
夕方5時、中には沢山の人。
こんな所に来た事ない彼女は呆気にとられるが、段々ワクワクしてくるのだった。
杏がどんな歌を歌うのか、とても楽しみ。
『ひぃー!!来たねー♪』
2人に気づいた杏が声をかけてきた。
『みぃちゃん、恭次来てるよー♪』
杏が指差して恭次を呼ぶと、彼はBarのカウンターで店員と何やら話している。
恭次が手招きするので、3人は向かうと――
『あ。』
『やっほー片桐さん♪』
恭次の影で見えなかった店員。
カウンターの中には大斗が立っているではないか?
『イイ驚きっぷり♪ここ俺の職場ー』
唖然としてる夕陽の顔に満足したらしい。
大斗はご機嫌な様子。
『俺もさっきまで知らなかったけど、佐々原さんのバンドの人がマスターの知り合いだって』
彼はヒョウヒョウとグラスを拭いている。
夕陽と違って、この場所に馴染みすぎて、高校生には少しも見えない。
"大斗に会ったらどうなるかな?"
と少し考えてた夕陽は、突然会ってしまった大斗に不意をつかれてじーっと彼を見つめる。
『神崎君、ここで働いてたんだぁ』
南深の問いかけに、微笑む大斗。
こいつ…また営業スマイルだ…
『片桐さん、なぁに?』
夕陽の視線に気づいた大斗は悪戯顔で言って、笑いを堪えている。