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『それにしても凄い場所よね?』
森を抜ける。
大斗はまたメットを被せてくれるが、ふっと手を止めて、
『僕…実はまだ無免なの♪さらに免許とれても1年間は2人乗り禁止だし♪』
サラッと爆弾発言。「はぁ?」っと彼を見る。
『誕生日まだだから。』
『い、いつよっ?』
『今月♪』
『絶句だね。…でも、しょうがないから乗ってく』
「早くしてよっ」とバイクに股がった。
『置いてくぞコラッ!!』
そのセリフに片足で大斗を軽く蹴る夕陽。
「イッテェ」と避けながら、そのまま彼は森の奥を見つめた。
『なんかあると、その度にここに来たなぁ…あの頃。…』
ポツリと呟く…
『ひろとー?』
『んー?』
『携帯知りたい』
『あははーその通りだ』
大斗はそう言って携帯を差し出す。
出会って4ヶ月になろうという日、初めてお互いの電話番号を知った。
帰り道、風に吹かれながら"現実に戻るんだぁ"と感じる。
でもきっと、今までとは違う明日が来る。
そんな気がした。
大斗は流行りの歌を口ずさむ。
世界で2人、今だけ…
心が満たされてしまった…
そんな夜。
変な気分…。
高校生になって、初めての夏が来る。