だって、先輩の事なんて…


『神崎君の話で飛んで行っちゃったよ…謝らないで…。あたしこそ、笑うなんて…不謹慎だよね…ごめんなさい・・・』


『別にいいんだ。そうしてくれたほうが、いい』


神崎君…


『ねぇ?前に嫌いって言ってたじゃない?先輩があんなだって知ってたの?』


『さぁ?強いて言えば本能だね』


「俺の勝ち」と笑った。

つられて再びもっと可笑しくなってしまった。



『その時に言ってよね』

少し膨れて言うと

『自分で気付かないといけないんだ。何でも…どんな事も…』



ねぇ?



『あたし…』


胸がいっぱいなの…


『好きな人がいた。ううん…違う…まだ好き…。忘れられない。誰と付き合っても忘れられない。家で独りで…寂しかった。あたしも、どうしようもないよ…。』


誰にも言えなかった事は、こうしてすんなりでてくるんだ…


『前に…小川で神崎君「幸せ?」って聞いたじゃない?…あたし…幸せになりたいよ…ただそれだけだった』


空に…吸い込まれてしまいそうだった…


『先輩のことは、だからちっとも平気。ぶっ飛ばしてくれてありがとうって思うくらい。それに先輩と元彼繋がっていた、自業自得よ。でも、神崎君を巻き込んじゃったね…ごめん。それと、プリント見せてくれて、ありがとう』


『ははっ律儀』

ほら、短くそう言ってまた笑うのね



ありがとう…


ありがとう



『ひろと…』



ゲホッ ゲホッ ゲホッ


驚いた大斗が咳き込む。


そして夕陽を見てまた空を見上げる。

とても晴れ晴れした顔をしていた。



『なぁにー?』

穏やかに、聞く。



『これからも、ずっと友達でいよーね』


夕陽は静かに言った。