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何もかも真っ暗だった…

朝とか夜とかで無く…


言葉と一緒に

いっそなら、あの時の記憶も失いたい…


しかし消えない鮮明な記憶…

夢の中にも現れる…


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雪那はキャバクラの経営者、兼クラブのママである。

しばらくして、警察とどう話し合いがあったのか、リハビリの為に様子を見るという事で、雪那が大斗を引き取る形になったのだ。


言葉が出ない以外は健康。

しばらくして退院になった。


それからの事はよく覚えていない。


母親からの手紙と共に預金通帳が渡された。

母親はこうなることを予想していたのだろうか?

何の心配しなくても、高校まで行けるだろう金額が入っていた。


手紙は開けられなかった…


雪那の考えは全くわからないが、咲のマンションの近くに部屋は用意された。学校へも近い。


咲はコンビニの時のような笑顔はないが、文句を言いながらも毎日やって来た。

どうやら店に行く代わりに世話を命じられたらしい。


変わらず全く言葉がでない。

魂が抜けたように、とりあえずご飯を食べ、眠り起きるの繰り返し。

学校にはまだ行けなかった。


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そんなある夜…。

けたたましいチャイムで起こされた。


家に来るのは1人しかいない。

玄関を開けると…


『ひろとくーん♪やっほー♪』

酔っ払った咲が入ってくる。


こんなベロベロの彼女の姿は入院してから始めて見るものだった。


『今日も元気にだんまりかい?』


咲は上機嫌で頭をグシャグシャしてきて、


そのまま手を止めた…





… … …





ポタ
ポタ…





顔に何かが落ちてきた。

何だ…?

!?

涙…ッ?


見上げると…咲が泣いていた…


『あんたは…そうやって、ずっとしゃべらないで、現実から逃げて、いつまでそうやっているつもりよ!!世界で大変なのは自分だけだって思っているの?独りぼっちなのは自分だけだって思っているの?!冗談じゃない!!』