『何やってんのよ?』

悲しそうな顔で咲は叫ぶ、大斗は目の前に立つ彼女を睨み付けて見つめる。


咲はそのままゆっくりと大斗の上に座るようにして彼を抱き締めた。

『焦ったよ…喧嘩なんて…久しぶりじゃない?』

大斗の頭を撫でながら咲は静かに言った。

彼は咲の身体を少し離して、彼女の手をそっと捕まえ自分の頬に当て目を瞑った。

ゆっくりと息を吸って話し出した。


『片桐さんの顔見たらすげー立川にカチンときて、気付いたらぶっ飛ばしてた。』

ふーっと息をつく大斗。

『あんた…人の為に誰かを殴ったの初めてじゃない?』

優しく咲は問う。

『しらねぇ…誰かを殴る理由なんていちいち覚えてねぇよ…』


咲はとても優しく微笑み大斗を再び抱き締める。大斗も咲の背中に手を回す。


『大丈夫よ…大斗は間違ってないから…』

『うん…』

『あの警察…まだいたね…あたしまで暴れそうだった…』

『うん…』

『大斗…大丈夫よ…あたしも…大丈夫…』

『うん…』


そして2人はベットに沈んでいった…


―――――――――


はぁぁー。


夕陽は部屋に入ると大きくため息をついた。

とにかくこのドロドロの身体を何とかしようとお風呂を溜める。


神崎君に何にも言えなかった…巻き込んじゃった…


熱いシャワーを浴びると、今日1日が思い出された。


見た事ない神崎君だった…。

あの顔…。咲さんの話振りから、あの警察と知り合い…?

また…助けられちゃった…いつもよりもずっと…


お風呂を出るが、大斗の事を考えると、今更落ち着かなくなる。


今頃2人はどうしているのだろう?


テレビをつけたまま、ぼーっとソファーに座る。バラエティー番組の軽快な音が部屋に響く。それがなんだかイライラしてパチッとテレビを消した。


ドキドキドキドキ…心臓の音が高まる。


落ち着かない…


ピンポーン!


それと同時に家のチャイムが鳴らされた。


それに驚き、その場でビクッとなってしまった。

時計を見ると23時40分…