『神崎大斗います?』

パタパタ足音が聞こえて部屋が開いた。


『神崎大斗を迎えに来ました』

そこには息を切らせた咲が立っている。

『あら、麻生さんじゃない?廊下を走らないでくれる?あなた達、まだつるんでるのね?』


そう言われた咲は警察を見て表情が固まった。

しかしすぐ深く深呼吸し…

『大体の状況は聞きました。少なからず理由があの頃とは違うはずです。残念ながらあたしもあの頃とは違います。今日は正式に大斗の保護者として来ましたから、大斗と夕陽ちゃん、連れて帰ります』


笑顔の少しもない顔で咲は冷静に丁寧に言った。

見た事ない咲の顔だった。

咲が少し担当と話して、警察を出る3人。

どういう訳か、幸いすんなりと出られた。


『さ、咲さん…』


夕陽が言いかけるが、咲はそれを遮って、

『ごめんね、夕陽ちゃん、変なとこ見せちゃったね。昔…色々あってね。とりあえず送ってくから乗って。』

いつもとは違う張り詰めた空気に夕陽は何にも言えなくなってしまった。

大斗は怖い顔をして黙ったままだ。


―――――――


『本当に大丈夫?身体も平気?とりあえず、家にいて。夕陽ちゃんの事もすっごい心配なんだけど、大斗が今一番危ないの。後で、そうだな、日が変わる前に大斗に電話させるから。絶対どこにも行かないでね。独りで平気?何かあったら大斗に電話して、すぐ来るから』


咲は一気に言った。

いつもみたいに余裕の雰囲気がなかった。

『咲さん、あたし大丈夫ですから…』

夕陽は慌てて言った。

実際に冷静さを取り戻していた彼女は、自分でもびっくりするくらい落ち着いていた。


大斗は目も合わせず、魂が抜けたみたいだ。


『ごめんね…』


咲が小さく微笑んで言い、2人の乗った車は走り去って行った。



―――――――


咲は大斗を彼の家に連れてきた。

彼女は大斗のポケットを勝手に漁り部屋の鍵を出して、荒々しくドアを開ける。

そして無言の大斗の手を引いてベットに投げつけるように勢いよく座らせる。