学校を出た頃は降っていた雨も止んだが、そのまま傘をさして夕陽は歩いていた。
ブァーッ!!
『あっ』
突然の横風で、傘は飛ばされてしまった。
飛んでいった傘は垣根を越えて公園の中に入ってしまう。
『とってくる…』
それだけ言うと公園の中に入っていった。
大斗はそんな夕陽を確認してから目の前の自販機で缶コーヒーを2つ買う。
全く…何なんだ?あいつは?
そして夕陽を見ると、傘を拾い上げまた肩に乗せている。
バカ?
雨降ってねぇけど…
しかし、夕陽は戻ってこない。
そのままの姿で、池が見えるように設けられた屋根のあるベンチの中をじーっと眺めているではないか。
何やってんだ?ったく。
壁があって見えないが、中の何かに釘付けだ。
そんな様子を見ていると、ペタリ…。
夕陽は急に地面に座り込んでしまった。
水溜まりの上に座る彼女、屋根からの水滴がポタポタ落ちていた。
傘がまた飛ばされた。
『おいっ片桐さん、大丈夫かよ?』
大斗が近づく…
それにつれてベンチに誰かが居るのがわかった。
男…?
1人が起き上がった。
そこには、男が後2人…下になって居る女が甘い声を出している。
『なぁにぃ?』
異変に気付いたのか下に居た女も起き上がる。
何をしてたかは乱れた彼女の姿を見れば分かる。
『『あ…』』
大斗と視界に入った男は同時に声を上げた。
そこに居たのは立川先輩だった。
夕陽は座ったまま固まっている。
張り詰めていた糸が切れたが、声は出ない。
屋根からの水滴と混ざり、自分でもどれだけ涙が流れているのかよくわからなかった。
『夕陽ちゃん、昨日帰っちゃうんだもん。寂しくなっちゃったからさぁ。ごめんね。夕陽ちゃんも一緒にやる?』
立川先輩は全く状況に動じなかった。
「ヤだ面倒くさそう」先輩達と絡んでいた女子高生はいそいそと制服を直して逃げるように去って行った。
夕陽は何も言えない。
この状況を把握することもできなかった。
しかし…大斗は大体の予想が出来たようだ。